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摘み取ったばかりの薔薇の莟みが匂うとき、
開封された手紙の文字たちが光に触れるとき、
黄砂のように植物の花粉が風に舞うとき。
唇をつなぐ蝶番、ひび割れた唇の奥の一葉の翼、
舌は春に乗り、春を羽ばたく。
二枚貝の化石の沈黙のあとで……
海原の小舟のように流れて
十分に遅く(アダージョ・アッサイ)
もっとも優しく美しい旋律に出会う
うねうねとした道
きわめて速く(プレスト)
歳月は忘却と傷を、傷を忘却と縫合する
クラクフから強い風が吹く
枢機卿の赤い裳裾が
世界の歴史のように翻る
カリグラのオベリスクのもとに跪く権力者たち
ただ悲しみの輪のなかに存在するために
はるかナイジェリアからやってきた青年
土曜日の午後五時すぎ
「逝ける王女のためのパヴァーヌ」を聴いている
五分と五十五秒
私は西の窓にかかるカーテンをすべて開けてみた
密集する屋根の上
光暈のなかから現われる沈むものの強い意思
すべてを吐きだした後に涙だけがきらめく
涙を袖につつむ
袖をしぼる四月の終わり
壊れたケータイの小窓に残る形見
寂しい心と笑う背骨を持った
生きている機械の
青い草に置く露のように輝くきみの体を抱いて
五月待つ花橘のように匂い立つきみのなかに入って
あしひきの山のしずくに濡れて
旅にて
legionnaire(外人部隊)として生きて
百重なす心のままに殺し殺されて
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